RoHS
PRTR制度について
 現在、多種多様な化学物質について、様々な手法により環境上適性な管理を進めようとする世界の動きがある。その手法の一つとして位置づけられているのが、環境汚染物質排出・移動登録(Pollutant Release and transfer Register:PRTR)と言う制度である。(訳すと汚染物質排出移動登録)これは事業所から排出される汚染物質や化学物質の種類と量を明らかにし,行政に報告させるとともに、一般にもそれらの情報を公開する制度である。この制度はすでにオランダ,イギリス,カナダアメリカ,オーストラリアなどの国で法制化済みであり,日本でもこのPRTR制度の法制化として,平成11年7月に、『特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律』が成立した。 この法律をPRTR法と簡単に呼ぶようになっているようだ。 PRTR法の流れは、下記の表を見てもらいたい。

                     PRTR法の流れ 1996.2 先進国の集まりである経済協力開発機構(OECD)が、その加盟国に対してPRTR制度の導入に取り組むように勧告。 1999.03.16  日本では環境庁及び通産省が共同作成「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」案が閣議決定。同日付けで国会提出。 1999.05.21 衆議院で一部修正のうえ可決。 1999.07.07 条文が参議院で可決し,成立。 1999.07.13 公布 1999.07.14 法律の施行について,一部の政令(物質・業種・裾切1999.07.15 り・製品の要件)及び化学物質管理方針が定             められた。 2000.?.?  2000年中にPRTR法の諸規定(排出量区分等)及び排出量算定マニュアル等が整備される。さらに2000年中にMSDSの諸規定(通産省令)が整備される。 2001.01   MSDSの交付が義務化になる。 2001.04 事業者による排出量移動量の把握が始まる。 2002.04   2001年度における各事業者の排出量、移動量は2002年4月以降に届出を要請される。その後集計、公表される。
  簡潔に言えば、、 「有害性のある化学物質は、どこから、どれだけ、環境中に排出されているのだろうか」をPRTR法で知る事ができる  と言うことである。

1、 日本におけるPRTR制度

 日本では、このPRTR制度の導入として、環境庁及び通産省が共同作成した「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」案が成立し、交付された。この法律は従来の大気汚染防止法などの規制法とは異なり、環境中に対象化学物質を出すこと自体が問題というような捉え方をするのではなく、規制が必要になる前の段階の措置、つまり環境保全上の支障が生ずる以前の段階で、事業者が自ら環境中に排出する化学物質の量などを把握し、それぞれの事業者が自主的な化学物質の管理の改善を図ることによって,環境保全上の支障の未然防止を図ろうとするものである。 このためPRTRの届出自体は義務化しているが、立ち入り検査などの規定はなく、罰則等についても過料(刑罰ではない)となっている。届出義務がかかる事業者からの届出事項に基づき環境庁長官及び通産省大臣が集計する排出量とを併せて公表する仕組みによって環境中への対象化学物質の排出の全貌を明らかにすることとしている。

2、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律の概要」

2−1、対象物質の選定
   人の健康を損なう恐れ又は動植物の生息・生育に支障を及ぼす恐れがある等の性状をもつ化学物質。(政令で定められている。)
1 第1種指2 定化学物質(354種類)
現状において、継続して環境に存在していることが認められているもの。
例:DBP・DOP・トルエン・キシレン・クロロベンゼン・酢酸ビニル・トリクロロエチレン・エチレングリコール・ホルムアルデヒドetc.
* 特定第1種指* 定化学物質(第1種指* 定化学物質の中の12種類)
発がん性の疑いがあるもの
例:ベンゼン・塩化ビニル・ダイオキシン類etc.
3 第2種指4 定化学物質(81種類)
 将来、全体的な使用量等が増加することによって、継続して環境に存在するであろう物。
 例:アセルアミド・p‐アニシジンetc.

 2−2、対象化学物質の排出量等の届出義務付け(PRTR)
    第1種指定化学物質等取り扱い事業者は第1種指定化学物質の環境への排出量・移動量等を把握し,都道府県経由でこれを国に提出。環境庁と通産省は共同で、対象事業者から届け出られた情報を対象物質ごとに、業種別、地域別ごとに集計・公表するとともに都道府県に提出。(都道府県は、その情報を基に地域のニーズに応じて集計・公表)また、届けられた排出量以外の家庭、農地、自動車等からの排出量等を推計し、併せて公表。国は、国民からの請求に基づき、個別事業所の情報を開示。(このとき、機には個別事業所の営業秘密を確保する。)   

排出量等の届出の義務がかかるのは第1種指定化学物質等取り扱い者である。
○第1種指定化学物質等取り扱い事業者の条件
 第1種指定化学物質等取り扱い事業者に該当する基本的な条件を以下に記す。
 以下@、A、Bの3項目に該当する事業者であること。
1 業種(下記23種類のいずれかの業種であれば該当)
金属鉱業 2)原油及び天然ガス鉱業 3)製造業 4)電気業 5)ガス業 6)熱供給業 7)下水道業 8)鉄道業 9)倉庫業(条件付) 10)石油卸売業 11)鉄スクラップ卸売業(条件付) 12)自動車卸売業(条件付) 13)燃料小売業 14)洗濯業 15)写真業 16)自動車整備業 17)機械修理業 18)商品検査業 19)計量証明業(条件付) 20)一般廃棄物処理業(条件付) 21)産業廃棄物処理業(条件付) 22)高等教育機関(条件付) 23)自然科学研究所 
      更に上記の業種で常時使用する従業員の数が21名以上の事業者   
2 第1種指3 定化学物質等のの取扱い(1.2.3に当てはまれば該当)
第1種指定化学物質を製造している事業者。
第1種指定化学物質等[第1種指定化学物質または第1種指定化学物質ヲ1wt%(特殊指定化学物質の場合は0.1%)以上含有している物]を使用または取扱っている事業者。
付随的に第1種指定化学物質を生成又は排出することが見込まれている事業者。
         注:使用する原材料、資材等の形状
          1:気体又は液体の物 2:固体のもので有り固有の形状の有するもの(粉末状等)
          3:取扱いの過程で、蒸発又は溶解するもの 4:精製や切断等の加工に伴い環境中に排出さ     
            れる可能性があるもの
4 第1種指5 定化学物質の取扱い量
2000.3.30〜2002.03.29の期間(2年間)
 取扱っている第1種指定化学物質のうち、いずれかの年間取扱量が5t以上の事業者。(特殊指定化学物質は0.5t)
2002.03.30以降は
取扱っている第1種指定化学物質のうち、いずれかの年間取扱量が1t以上の事業者。(特殊指定化学物質は0.5t)

 2−3、国による調査の実施
     国は集計結果等を踏まえて環境モニタリング調査及び人の健康等への影響に関する調査を実施。その結          
     果も公表される。

 2−4、化学物質安全データシートの交付の義務付け(MSDS)
 指定化学物質等取扱い事業者が指定化学物質等の譲渡を行うに際し、相手方に対して当該化学物質の性状及び取扱いに関する情報を提供しなければならない。いわゆるMSDS(Material Safety Date sheet)の交付である。.

     MSDSの交付の義務がかかるのは指定化学物質取扱い事業者である。
指定化学物質等取扱い事業者の条件(1.2.3に当てはまれば該当)
1)第1種又は第2種指定化学物質を製造している事業者。
2)指定化学物質等[第1種又は第2種指定化学物質を1%以上含有しているもの]を使用または取扱っている事業者。
付随的に第1種指定化学物質を生成又は排出することが見込まれる事業者。
 2−5、国及び地方公共団体による支援措置等
 国及び地方公共団体は対象化学物質の排出量等野届け出、MSDSの交付等がスムーズに行われる様に、        技術的助言、化学物質の性状等に関するデータベースの整備等の支援措置を行う。