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RoHS指令に関するQ&A                                          2003.07
                                                            SEAJ 環境情報専門委員
Q1 RoHS指令の正式な名称は、何というのでしょうか?
 RoHS(Restriction of the use of certain hazardous substances in electrical and electronic equipment)指令であり、訳すと「電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する欧州議会および理事会指令」です。
Q2 RoHS指令は、いつ発効されたのでしょうか?
 欧州委員会は、2003年2月13日にこの指令を発効し、EU加盟国に対し法制化を求めています。
Q3 RoHS指令はどのような要求内容でしょうか?
 その概要は、「2006年7月1日以降、上市される新しい電気電子機器が下記の6物質を含有してはならない」との要求事項です。 2006年7月1日までの加盟国の対応は2003年2月13日以前の国家法を維持してよいとされています。
 1)鉛 2)水銀 3)カドミウム 4) 6価クロム 5) PBB(ポリ臭化ビフェニール) 6) PBDE(ポリ臭化ジフェニールエーテル)
   ただし、上記1)〜4)の物質には適用除外があります。 <http://219.103.211.37/envsite/extmaterial.htm>
Q4 RoHS指令の対象製品は何ですか?
 RoHSは、WEEE指令の付属書IAに定める10のカテゴリー(下記参照)より8、9を除く電気電子機器、ならびに電球および家庭用照明器具に適用するとしています。
  WEEE指令で範囲とする電気電子機器のカテゴリー
   次のカテゴリーで交流1000ボルト、直流1500ボルトを超えない定格電圧で使用する電気電子機器に適用
   1、大型家庭用電気製品 2、小型家庭用電気製品 3、ITおよび遠隔通信機器 4、民生用機器 5、照明装置 6、電動工具 7、玩具、レジャーおよびスポーツ機器 8、医療用デバイス(すべての移植製品および感染した製品を除く)9、監視および制御機器 10、自動販売機類 
Q5 半導体製造装置は、RoHS指令の適用となるのでしょうか?
 現状では、次の理由で適用になるかどうかが不明確であります。
 1、半導体製造装置としては、上記10のカテゴリーのいずれにも属さないので適用外と考えられます。しかし、半導体製造装置は監視・制御機器を内蔵しているので、装置としてカテゴリー9に属すると解釈される可能性がありますが、確認は取れていません。
 2、カテゴリー8、9に属する電気電子機器は適用除外ですが、2005年2月13日までに対象範囲に含めることを提案しなければならないと言及されています。
 3、日本機械輸出組合からの情報では、上記カテゴリーに属する製品リスト(WEEE指令付属書TB)が単なる例示であるとの解釈が言われ、コンピュータを搭載した全ての製品が適用されるという説も存在します。
 従って、現時点での判断では、半導体製造装置が適用範囲に入るかどうかは「グレー」と言わざるを得ないです
Q6 装置の一部(コンピュータなどのユニット)が対象になりますか?
 そのユニットが単体でも使用可能な汎用品で、カテゴリー1〜7、10に該当する場合(例:コンピュータ)、対象になるとの見方があります。 この場合、半導体製造装置内に組み込むそのユニットは、2006年7月以降は規制物質を含有してはならない、と解釈されることもあります。 しかし、この点も現時点で明確には判断しにくい状況であります。
Q7 半導体製造装置が「グレー」の段階で、装置メーカーとしてどう対応すべきでしょうか?
 顧客のグリーン調達基準にRoHS指定物質に対する規制要求が入っているケースが見受けられます。現状の多くは顧客製品の部材となるものへの規制が主体ですが、生産設備にまで要求しているケースもあります。
 今後さらにこの動きは拡大するものと思われます。対応としては、装置を構成している部品等にRoHS指令の指定物質が含有しているかの調査を実施し、含有する場合その代替を検討します。代替には技術的、経済的、時間的問題が生じることが明らかですので、計画的に取り組むべきだと思います。



Q8 RoHS指定物質は人の健康に対しどんな影響があるのでしょうか?
 次のような健康への影響が云われています。 
鉛 中枢神経系機能障害、 発ガン性
水銀 脳障害、精神障害、水俣病
カドミウム 腎機能障害、生殖障害、イタイタイ病
6価クロム 発ガン性
PBB 生物体内蓄積性、生体有害性
PBDE 生物体内蓄積性、生体有害性
Q9 これらの物質は半導体製造装置のどのような部品に使われているのでしょうか?また、その代替技術は
   確立 されているのでしょうか?

下表を参照下さい。
RoHS指定物質名 含有可能性部品例 代替技術
鉛 1)共晶はんだ 2)鉛蓄電池 3)快削合金 4)X線使用分析機器、イオンインプラント装置のX線シールド 5)鉛ガラス(シールガラス,CRT,ダイオード,光学レンズ) 6)圧電素子(超音波発振素子その他) 7)塩ビその他樹脂の配合材(顔料、ステアリン酸鉛等) 1)鉛フリーはんだに移行 2)Ni/H, Liイオン電池          5)CRT以外は無鉛化試行中       7)色変更、ステアリン酸錫など
水銀 1)水銀電池 2)水銀リレー 3)蛍光灯・水銀ランプ・液晶バックライト 1)1955生産中止。アルカリボタン電池、水銀電池アダプター等に既に移行。 2)設計変更可能な場合も。 3)原理的に代替困難。使用量削減アプローチ。
カドミウム 1)ニカド電池     4)樹脂安定剤 2)CdS系素子      5)リレー接点 3)塗料中顔料 1)Ni/H、Liイオン電池 2)特殊                                                                           3)顔料変更
6価クロム 1)クロムメッキ(製品には含まれない) 2)クロメート処理 (亜鉛メッキ表面等) 1)3価クロムメッキで代替可能の場合あり。 2)3価クロメート処理
PBB 樹脂、繊維等配合臭素系難燃剤 他の物質に代替済み
PBDE 樹脂、繊維等配合臭素系難燃剤 他の物質に代替移行中
A9−2関連する部品等についてこれらの物質の削減背景、今後の動向などについて以下に参考情報をまとめました。
RoHS指定物質名 含有可能性部品例 備  考
鉛 1)共晶はんだ 2)鉛蓄電池 3)快削合金 4)X線シールド 5)鉛ガラス 6)圧電素子 7)塩ビその他樹脂の配合材 1)鉛フリー化は避けられない。過渡的に同一基板上に従来の共晶はんだと鉛フリーはんだの電気部品が混在することが考えられ品質維持の確認を急ぐ必要がある。現在は、Sn-3Ag-0.5Cu が鉛フリーはんだの主流になりつつある。 2)鉛使用量の80%は鉛蓄電池。 4)X線防護ゆえ代替は困難  5)光学レンズでは新製品設計時に鉛フリーを推進。ただし、特殊製品では困難な場合もある。CRTはX線防護のため、代替困難 7)透明塩ビ材では従来からステアリン酸錫配合
水銀 1)水銀電池 2)水銀リレー 3)蛍光灯・水銀ランプ・液晶バックライト 1)アルカリ乾電池も亜鉛電極に水銀が塗布されていたが、現在は水銀フリーに既に移行済。  1996年末をもって、日本国内メーカーからの水銀電池の出荷が終了。 3)代替技術が確立するまでは、回収ルートを確立して対応する。また、蛍光灯はリサイクルシステムが確立されている。
カドミウム 1)ニカド電池 2)CdS系素子 3)塗料中顔料 4)樹脂安定剤 1)カドミウムは年間2290トン生産され、その75%が蓄電池に用いられている。代替は電流供給能力から、Ni/H電池有利か。 3)硝酸カドミウムは腐食防止塗料として使用される場合がある。 4)炭酸カドミウムは、塩化ビニルの安定剤として使用される場合がある。
6価クロム 1)クロムメッキ (製品には含まれない) 2)クロメート処理  (亜鉛メッキ表面等) 1)「3価クロムメッキ」は「6価クロムメッキ」の最有力代替技術。但しメッキ厚(防錆性)、コストに注意 2)6価クロメート処理表面膜には微量の六価クロムが含まれる。樹脂皮膜鋼板には下地としてクロメート処理したものがあるので注意。(クロムフリーの代替商品あり)
PBB 樹脂、繊維等配合臭素系難燃剤 生産中止済み(日本のみ)
PBDE 樹脂、繊維等配合臭素系難燃剤 日本では早くから使用されていないか、使用量が少ない。ただし、欧州、アジア、米国では使用しているので輸入品には要注意 ※代替素材の赤燐系難燃剤が事故を起こした報道があるので注意
Q10 RoHS指定物質の最大許容量は設定されていますか?
 RoHS指定物質の最大許容量(=閾値)は明確にされていません。最大許容量の決定日はまだ見えていません。
 自然界濃度と人の健康許容度などが基準となると思われ、最終的にはWHOの基準値が参考になると思います。EUでは、危険物質及び調剤の使用と上市の制限に関する指令(76/769/EEC)で制限(例 カドミウム 100ppm=0.01重量%)があります。
 また、包装及び包装廃棄物に関する指令(94/62/EC)では包装材に含まれる鉛、水銀、カドミウム、及び6価クロムの最大許容量は、重量比で100ppmです。更に、廃自動車令・ELV指令(End-of Life Vehicles 2000/53/EC)は、2000年10月21日に発効し、2002年6月29日の官報で一部修正されました。このELV指令では、鉛、水銀、カドミウム、及び6価クロムが規制されており、最大許容量は鉛、水銀、6価クロムが0.1重量%、カドミウムが0.01重量%です。いずれにしてもEUでこれらの指令とも整合が採られると思います。